『源氏物語』が紫式部によって書かれたのは、平安時代。1008年頃と言われています。
こちらでは、その『源氏物語』に出てくる「食用の植物」を取り上げてみました。食用の植物とは、その頃に栽培して食べられていた植物になります。食べられていたお料理ではありません。
植物が多かったため、食用の植物、観賞用の花の植物、その他の植物に分けさせていただきました。他の2つもぜひご覧ください。
今から千年も前にどんな食用の植物があったのか、どんなお花を育てていたのか、その他にも染物用の植物など、今との違いなどを含め、愉しんでいただけたら幸いです。
源氏物語に登場する食用の植物
題名の「」内が『源氏物語』に出てくる食用の植物の名前一覧になります。当時の名前と現在の名前とが違い少しわかりにくいものもあるため、現在の名前や現在の漢字なども題名横に添えました。また、その食用の植物の詳細があるものは、リンクしてご覧いただけます。
あいうえお順になっております。
「あさつき」 あさつき 浅葱
「あさつき」は、ヒガンバナ科ネギ属の球根性多年草。
別名「いとねぎ」といわれるように、葉ねぎよりも細いものです。
元々「あさつき」は、野草の仲間になります。本来はねぎの仲間ではないのに、ねぎと言われています。
ねぎは、花が咲いて種ができてまた芽が出てねぎになるものです。あさつきは、種ではなく、球根で増えていく植物です。
「ねぎ」のまとめ記事についてはこちら ↓↓↓

あさつきは、葉ねぎよりも緑の色が薄く、「浅葱色(あさぎいろ)」という色の名前は、このあさつきの色から付けられた名前となります。
『源氏物語』では、第21帖に「少女」という巻があり、そこで「浅葱色」のことが描かれています。
「いね」 いね 稲
「稲」は、イネ科イネ属。
主食となるお米です。
稲作が日本に伝わったのが縄文時代と言われています。
「うり」 まくわうり 真桑瓜 甜瓜
「マクワウリ」は、ウリ科マクワウリ属。
メロンの変種。果実を食用とします。
南アジア原産。縄文時代に中国から日本に伝わったとされます。
季語は夏です。
現在のウリ科の植物には、きゅうり、ゴーヤ、すいか、とうがんなどがありますが、『源氏物語』の頃の「うり」と言ったら「まくわうり」のことを指していました。
「えび」 えびづる 蝦蔓
「エビヅル」は、ブドウ科ブドウ属のつる性の落葉樹。
山葡萄の仲間。
花は6月~8月に咲きます。
実は熟すと甘くなり、生で食べることができます。
「かうじ」 こうじみかん 柑子みかん
「柑子みかん」は、ミカン科ミカン属の常緑小高樹。
柑橘類の一種。紀州みかんの古名。温州みかんよりも強い酸味のあるみかんです。
「柑橘類の品種」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

『源氏物語』では、蹴鞠(けまり)のあとで「かうじ」を食べている様子が描かれていました。
「くり」 くり 栗
「栗」は、ブナ科クリ属の落葉高木樹。
栗は、縄文時代から栽培がされていたとされます。平安時代になり、京都の丹波地方での栽培が盛んとなり、各地に広がったとされます。
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「くるみ」 オニグルミ 鬼胡桃
「オニグルミ」は、クルミ科クルミ属の落葉高木樹。
現在一般的に食用とされているクルミではなく、『源氏物語』の頃のくるみとは「オニグルミ」のことを指します。「オニグルミ」は縄文時代から食用とされていましたが、現在では主にリスの食糧となっています。
オニグルミは、日本産のくるみでは唯一の食用種となります。
「せり」 せり 芹
「せり」は、セリ科セリ属の多年草。
日本原産。奈良時代にはすでに食用とされていたという記録が『古事記』(712年編纂。奈良時代初期)や『万葉集』(7~8世紀後半に編纂。奈良時代末期)にも残っています。
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「たちばな」 たちばな 橘
「たちばな」は、ミカン科ミカン属の常緑小高樹。柑橘類の一種。
食べる「たちばな」と観賞用の花の「花たちばな」についてはこちら ↓↓↓

「ところ」 野老 オニドコロ 鬼野老
「オニドコロ」は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性の多年草。自然薯と似たような場所に自生します。
「ところ」とは、現在では「オニドコロ」のことと言われています。現在のオニドコロは、有毒性があると言われていますので、一般的には食用にはしていません。青森県の一部の地域では、食べられているようです。
オニドコロと自然薯の違いは下記の通りです。
①自然薯やヤマノイモ科の芋たちは、土深くに生えていくのに対し、オニドコロは横に枝分かれして伸びていきます。
②自然薯の葉は対で生えているのに対し、オニドコロの葉は交互に生えています。
③自然薯にはムカゴがなりますが、オニドコロにはムカゴはつきません。
自分で収穫する際などには、十分にお気をつけください。
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「自然薯」についてはこちら ↓↓↓

「なし」 なし 梨
「梨」は、バラ科ナシ属の落葉高木樹。
中国原産の梨は、弥生時代には日本に伝来したと言われています。
『源氏物語』では、蹴鞠(けまり)の後の酒宴で菓子として梨を食べている様子が描かれています。
「にんにく」 にんにく 大蒜
「にんにく」は、ヒガンバナ科ネギ属の多年草。
「にんにく」は、エジプトからインド、中国を経て奈良時代に薬として日本に伝わったとされます。『万葉集』(7~8世紀後半に編纂。奈良時代末期)には、にんにくの美味しい食べ方が記されています。
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『源氏物語』では、第2帖に「帚木」という巻があり、「にんにく」にまつわる薬や恋愛のエピソードがいくつか出てきます。この頃からにんにくの強烈な臭いの悩みがあったようです。
「はちす」 れんこん 蓮根
「れんこん」は、ハス科ハス属の多年草。
「はちす」とは、蓮の花が終わったあとにできる蓮肉(実)の入った花托(かたく)が、蜂の巣に似ていることから、古名を「蜂巣(はちす)」といい、仏縁に深い花とされています。
蓮の花の水中にある茎が肥大化した部分が食用となり、今の名前でいう「蓮根(レンコン)」になります。
「蓮の花」についてはこちら ↓↓↓

「みる」 みるふさ 海松房
「みるふさ」は、ミル科ミル属。
「みる」とは、海藻の一種。現在では食べる習慣はないが、古代では食用の海藻とされていました。
「海松(うみまつ)」の訓読みを「みる」ともいいます。
「海松(うみまつ)」とは、海岸に生えている松のことをいいます。
「みるふさ」とは、海松(うみまつ)の枝が房になっているものをいいます。この「みるふさ」を髪そぎの時に用いていたようです。
『源氏物語』では、海藻としての「みるふさ」を人に例えてあったり、松としての「みるふさ」を髪そぎとしても詠まれており、言葉の表現の無限の広さに驚愕させられます。
「め」
昆布やわかめなどの海藻の総称をいいます。
「よもぎ」 よもぎ 蓬
「よもぎ」はキク科ヨモギ属の多年草。
「よもぎ」は、春の若葉が食用となります。また平安時代には、薬草として干して煎じて飲まれていたようです。
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『源氏物語』では、第15帖に「蓬生(よもぎう)」という巻があります。
「わかな」 な 菜、わかな 若菜
「わかな」とは、春の初めに芽生える食用となる菜類の総称をいいます。季語は春になります。
平安時代、「春の七草」は「わかな」と呼ばれていました。現在の「春の七草」の七種類の草は、江戸時代に徳川家の庭にあった草と言われているので、平安時代にいわれていたものとは違います。
逆に、平安時代には「七草粥」ではなく、「七種粥」があり、7つの穀物の米、粟、黍(きび)、稗(ひえ)、篁子(みの)、胡麻、小豆で作られたお粥でした。
「春の七草」についてはこちら ↓↓↓

『源氏物語』では、第34帖に「若菜」という巻があります。
「わらび」 わらび 蕨
「わらび」は、コバノイシカグマ科ワラビ属の多年草。
「わらび」は、日本原産と言われ、『万葉集』(7~8世紀後半に編纂。奈良時代末期)にも詠まれています。
「わらび」は、シダ植物の一種。春の若い茎を食用にします。また、根茎から採れるでんぷんから作る「わらび粉」を使って「わらび餅」などの和菓子にもなります。
「春の山菜のわらび」についてはこちら ↓↓↓

「わらび粉から作るわらび餅」についてはこちら ↓↓↓

『源氏物語』では、第48帖に「早蕨(さわらび)」という巻があります。
「早蕨」とは、芽が出たばかりのわらびのこともいいますが、色目を表す言葉としても使われています。奈良時代や平安時代の貴族が身に着けていた衣類の色の重ね(襲・かさね)の色目のことをいい、「早蕨」は、表が紫で裏が青(現在の緑)とされ、春または3月に使われる色となります。
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明日はどんな手仕事する?
『源氏物語』に登場する食用植物の紹介でしたが、現在でも食べられているものに関しては、品種改良が進み、『源氏物語』の頃に食べられていたものとは、味が随分違うのではないかと思われます。
その頃には、その味が美味しかったと思われるので、食べてみたい気もします。
今では、種類も品種も増え、食べやすく改良がされ、どれだけ贅沢な食生活を送っているのかと、反省するばかりです。物価高だと問題にするよりも、質素倹約ではありませんが、食べ物のありがたみを深く考える良い機会なのではないのかとも思います。
それでは、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
明日が素敵な1日になりますように。
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