子供の頃、冷凍庫で氷を作り、市販のシロップを買ってきて、かき氷機でゴリゴリと回しながら、甘いシロップをかけて、かき氷を作って食べていたことが懐かしく思えます。
秩父の天然の氷で食べるかき氷が、頭も痛くならず、ふわふわして美味しいと評判になったのが、ちょうど2000年頃でしょうか。
そこから更に進化した現代のかき氷は、見た目もおしゃれとなり、味もトッピングも無限に増え、デザートとしてオールシーズン食べることができるものとなりました。
そんな「かき氷」は、予想以上に古くから食べられていたものになります。歴史を知ることで、もっとかき氷が美味しくなるかもしれません。
かき氷の歴史「削り氷(けずりひ)」
かき氷の歴史は古く、『枕草子』(平安時代中期、1002年頃。清少納言作)には、涼菓として「削り氷(けずりひ)」と呼ばれていたかき氷を食べたことが描かれています。
『あてなるもの けずりひにあまづらいれて…』高貴な物として、かき氷に甘葛を入れて…とあります。
「削り氷」を食べることは、平安貴族たちの中では、高貴で上品なもの「あてなるもの」の1つとされていました。
さてでは、この「削り氷」、冷凍庫もない、砂糖もない時代に、どうやって食べられていたのでしょうか。
氷・氷室について
冷蔵庫も、もちろん冷凍庫もない時代に、氷をどうやって調達したのでしょうか。
氷は、天然の氷を使っていたようです。
平安時代は、冬場に奈良などの標高の高い山地で天然の氷を作り、「氷室(ひむろ)」という氷を保管する小屋で、氷を茅で覆い、夏まで保管していたと言われています。
現代の夏の暑さでは、氷を自然の中で保管するということは、なかなか信じられないことではありますが、石川県金沢市の湯涌温泉で冬の間に貯蔵しておいた雪(氷)を取り出す「氷室開き」が現在でも行われています。この氷室は、冬に積もった雪を茅葺きの貯蔵庫に保存し、旧暦の6月1日(現在では6月30日)に雪(氷)を取り出し、加賀藩から徳川家に献上されていたという伝統を引き継いでいるものです。
2025年は酷暑のため、神戸市灘区の六甲山山頂近くにある氷室の扉を開けて山上に吹く風を取り込む「氷室開き」が行われたところ、20トンの氷が全て解けてしまっていたようです。これから、このような暑さが続くと、氷室の存在がなくなってしまうのではないかと思うと残念です。
シロップについて
平安時代に頃に食べられていた「削り氷」は、天然の氷を削り、「甘葛(あまづら)」という甘味料で作られた密(シロップ)をかけて食べていたようです。
この「甘葛」とは、日本で最も古い甘味料と言われています。砂糖が普及する室町時代頃までは主な甘味料として使われていました。
甘葛の原料は、夏蔦(なつづた)の樹液とも葛の根から採った汁とも言われています。冬に樹液の糖度が最も上がることから、冬の最も寒い時期に採取し、10分の1程度まで煮詰め「甘葛」が作られました。糖度は70~80%と言われ、蜂蜜に似た味と言われています。
平安時代にはとても貴重だったため、貴族などの限られた人しか口にする機会がなかったようです。
甘葛は、「つばいもちゐ(椿餅)」などにも使われたとされます。
器について
『枕草子』によると、「けずり氷」は、新しい金属のお椀で食べていたとされます。
現代のかき氷
最近のかき氷の進化は、恐れを知らず、エスプーマ(泡)がのっているものや、砂糖をかけてバーナーで炙ってカリカリにするものや、サラダやおかずなどがのっているしょっぱい系のかき氷まで登場しています。
それらを含めた最近のかき氷の種類の紹介です。
現代のかき氷の種類~ノーマルタイプ~
練乳
練乳は、みなさん大好きですよね。かき氷には欠かせません。
練乳は、氷にかけて食べるのが普通ですが、写真の雲上かき氷さんは、氷に練乳が含まれており、それを削っているので、練乳をかけることでふんわり感がなくなることがありません。

抹茶練乳
抹茶味は、苦くて濃いめの抹茶から薄めの抹茶までいろいろです。
静岡育ちの私は苦くて濃いめの抹茶に練乳を合わせるのが好きです。

現代のかき氷の種類~フルーツタイプ~
いちご練乳
いちご味と練乳は定番です。
最近では、生のいちごの濃いソースをかけてくれるところが多いですね。

いちご杏仁
イチゴソースといちごジャム、杏仁ソースがかかっています。

ブルーベリー練乳
ブルーベリーの農家さんが近くにある雲上かき氷さんでは、ブルーベリーは定番です。
ブルーベリーの濃厚なソースが、練乳と合い、抜群に美味しくなります。

もも
フルーツタイプは、生のフルーツからソースを作っていらっしゃるところが多く、濃厚で美味しいですよね。

現代のかき氷の種類~スイーツタイプ~
キャラメル練乳
キャラメルソースと練乳をダブルでかけた甘~いかき氷ですが、これがじつに美味しい。クセになります。

焼き芋
焼き芋ソースに焼き芋までのっているかき氷です。不思議に思われるかもしれませんが、焼き芋と氷、合います。

おすすめのかき氷やさん
ふわふわのかき氷を食べることができる名店の紹介です。
阿左美冷蔵 金崎本店
明治32年(1890年)創業の天然氷製造所が営む氷店。
ふわふわの天然氷が味わえます。
《 阿左美冷蔵 金崎本店 》
埼玉県秩父郡皆野町金崎27-1
0494-62-1119
10:00~16:30
7月8月は無休。それ以外は木曜日定休。
雲上かき氷

富士山の麓にある富士山の湧き水で作った氷のかき氷です。
自然の中でふわふわのかき氷をいただくことができます。
《 雲上かき氷 》
静岡県富士宮市山宮3362-1
0544-58-7898
10:00~17:00
日曜定休
三好堂
和菓子店で提供されるかき氷です。
山梨県産の果物を使って作ったソースがおすすめです。
《 三好堂 》
山梨県南アルプス市飯野3703-7
055-282-2206
火曜定休
京の氷屋 さわ
唯一無二の京都らしい氷として、白味噌を使ったかき氷や、豆腐を使ったかき氷が食べられるお店です。氷は鈴鹿山脈の純氷を使っています。
《 さわ 》
京都府京都市上京区泰童片原町664-7 西陣です。
月、火曜日定休
かき氷のおすすめの逸品
平安時代に食べていた「削り氷」は、こんな器に盛られていたのかと想像しています。錫の素材で、氷も器も冷たさも楽しめるのではないかと思います。
「能作」さんの錫の器を、こちらからお取り寄せができます。↓↓↓

明日はどんな手仕事する?
「かき氷」は、日本発祥の和菓子です。
今でこそ、日本だけでなく海外でも、かき氷にはいろんなソースやトッピングがあり、種類は無限にあるデザートとなりましたが、元はシンプルな甘味です。
冷蔵技術の発展により、簡単に食べることができるようになった氷ですが、元は苦労して作り、保管して、夏に食べていた贅沢品だったことを忘れてはいけないのかと思います。
京都には、甘葛煎に模したシロップをかけて食べる氷やさんもできたようです。こちらもお伺いしたいものです。
現代のデザートのようなかき氷も、とても夢があって、いくらでも食べたい気分ですけどね。
それでは、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
明日が素敵な1日になりますように。
和菓子の関連記事
◆「和菓子の季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

◆「和菓子①和菓子の種類100種類以上」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

季節の手仕事の関連記事
◆「季節の手仕事カレンダー」はこちら ↓↓↓

◆「食材別の季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

◆「暦としつらえの季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

◆「お花の季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

◆「おすすめの食材店と旬の食材探しで訪れたい道の駅」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

コメント