【季節の花図鑑「万年青(おもと)」】江戸時代に縁起物として大人気だった万年青の世界は地味だけど美しい

 5月に咲く花




万年青の歴史

江戸時代の園芸ブームにより万年青を栽培することが大流行しました。なんと万年青に高額の値がついたとされます。

同時に、万年青専用の鉢もブームとなり、たくさんの種類の鉢が作られました。

その江戸時代に流行ったとされるのが、「斑入りの万年青」。手入れもされていないうちの「斑入りの万年青」ですが、私よりも長生きしているようです。根茎も土から出て、地上に見えてしまっています。

斑入り万年青 20231021
2023年10月21日 斑入り万年青

明治時代にも、「万年青」の栽培のブームがあり、その際にも高値がついたとされます。

これまでに何度も「万年青ブーム」がおき、現在まで至るということは、「万年青」にはそれだけの秘めた生命力と魅力があるのだと思います。

万年青(おもと)とは

万年青の原産 

中国原産。

万年青の科属 

キジカクシ科スズラン亜科オモト属。多年草。

万年青の名前の由来

葉が1年中青々としているから、この名が付きました。

万年青の自生場所

関東以西の山地。

万年青の季語 

緑の葉と赤い実から、万年青は「秋」の季語となります。

万年青の花言葉 

「長寿」

「長命」

これは、わかる気がします。うちの万年青は、手入れもせずに、私よりも長生きしています。枯れることがありません。

縁起のよい万年青 風水と万年青

庭に万年青を植えると、その家は代々栄えると言われています。

また、鬼門である北東方向に万年青があると、邪気を祓ってくれると言います。鉢でも効果があるようなので、気になる方は、置いてみてください。

万年青の出生とその姿

万年青の出生、万年青の姿です。

万年青の草丈 

品種により20~60センチくらいのものもあります。

万年青の根

根20180101うち
2018年1月1日

間引いてあげようと、抜いた写真です。長芋のような長い根茎(右側の折れてしまっているもの)と無数の細い根です。この根が発達し、長年枯れずにおります。この根茎は毒素が強いため、絶対に口にしない方が良いです。

万年青の葉

葉20171219うち
2017年12月19日

万年青の品種によりサイズは異なりますが、短い葉は20センチほど、長い葉は50~60センチにもなります。

また、しっかりとした厚さがあり、とても丈夫なことから、生命力の強さを感じます。

万年青の花

万年青の花20250515うち
2025年5月15日

花は、5月に咲きます。鮮やかに咲き誇るような花ではなく、陽の当らない葉の影に隠れて咲いているので、葉をよけてみないと気が付きません。1つの花自体は5ミリほど。花の塊は3センチほどの長さです。花の茎は、1センチくらいから、長いと5センチくらいまで伸びるものもあります。花の茎はとても短いです。

花アップ20230516
2023年5月16日

万年青の実

実20231020
2023年10月20日

茎に花の後が残り、1粒だけ実がなっていました。本当は、ブドウのように咲いた花の数だけ、実がなります。うちは手入れもしていないので、しっかりした実ができません。この実が年末には、赤くなります。

万年青の出生の特徴

毎年、古い葉の和合(2枚の葉の組み合わせ)の内側より新しい葉がでてきます。

新しい葉は、和合として向き合って出てくるのですが、その新しい葉の和合の外側から新しい茎が伸び、花が咲きます。

咲いたお花1輪が1粒の実となり、秋にはぶどうのような塊の赤い実をつけます。

万年青は、古い葉の和合の中にはなりますが、新しい葉の和合の外に花が咲き、それが実となるという不思議な特徴を持っています。いけばなでは、この万年青の出生を活かしていけます。

和合と花20250515うち
2025年5月15日




万年青の栽培方法・注意

万年青は、ほとんど手がかかりません。私は自分の性格上、暑くなる前に新しい葉が成長したら、古い葉を1組残し、全部取ってしまいます。古い葉がたくさんになり汚くなるのが嫌なだけです。新しい葉が伸びる空間を作ってあげると元気よく育つということもあります。

万年青のいけ方・飾り方

万年青をお正月にいける理由

万年青の緑の葉は、古葉と新葉の常緑が絶え間なく続くことから、子孫存続や繁栄の象徴とされています。新葉の和合の外に赤い実をつけることから、おめでたい花としてお正月にいけられます。

万年青のいけ方

万年青は、細長い葉と赤い実をセットにしていけることが多くなります。

葉は、少し硬めでしっかりとしています。葉の長さの調整のために切った部分を剣山に挿すことも可能です。切り方としては、先を尖らせるように切り剣山などに挿すのが普通ですが、長い葉などはそれでは耐えられない場合もあります。長い葉などは、尖らせずに逆にM字型に切り剣山に挿すと安定します。

実は、丈が短いことが多いのでなるべく切らないで使うのが良いでしょう。また、茎が細く、赤い実が重い場合は、倒れてしまうこともあります。その際には、茎の先に爪楊枝を挿してから、剣山などに挿すと安定します。

万年青の水揚げ

万年青は、水揚げは良いので心配ありません。1ヶ月近く枯れずに生き続けます。

万年青のおすすめの花器

万年青をいけるには、口の広い水盤にいけるのがよいでしょう。

いけばなでの万年青のいけ方

万年青の生花20180101
2018年1月1日

華道家元池坊では、生花「七種伝」の1つとして、また立花「立花十九ヶ条」の「万年青の前置」として、格調高くいけられます。

上の写真は、庭の万年青を生花「七種伝」でいけました。買ってきた万年青と違い、家の庭の万年青のため、葉が汚いのはご了承ください。

「生花」とは、そのお花の出生をいかした花形となります。

この「万年青」のいけ方も、万年青が生えてくる姿そのものをいけています。生えてくる姿は、上記「万年青の出生の特徴」に記載しました。いけ方は、生えてくる姿と全く同じです。

お花の出生を活かしていける、いけばなの「生花(しょうか)」といういけ方は、お花の本当の姿を知らないといけることができない花型です。お花の本当の姿を知ってこそ、お花を綺麗に活かしてあげることができるのではないかと思います。いけばなの奥の深さを知るには、一生勉強しても足りないくらいだと思っております。

生徒さんの作品20171219
2017年12月19日

生徒さんの作品。毎年のように年末には「万年青」のお稽古をします。

万年青のおすすめの逸品

万年青をいけるには、口の広い「水盤」がおすすめです。こちらからお取り寄せができます。↓↓↓

万年青の関連記事

◆「お正月のお花」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

【季節の花図鑑「お正月の花」】もっと知りたい!お正月に華やかに飾りたい「生の花」の種類11種!
お正月に飾る生のお花の種類として、裏白、万年青、松竹梅、千両、椿、南天、福寿草、万両、蠟梅を紹介。新年を迎えるおめでたいお花を飾りましょう。

お花の関連記事

◆「お花の名前別まとめ(写真付き)」の記事はこちら ↓↓↓

【季節の花図鑑「お花の種類一覧」】お花の名前約300種以上!ここから見ればお花のことが調べられます!
お花の仕事をしているからか、撮りためた写真は数え切れず。直近8年程の写真を季節の花図鑑として、約300種程のお花の名前別の写真集にしてみました。写真からお花の名前を知ることもできます。それぞれ記事にしてあるものはクリックしてご覧ください。

◆「お花の季節の手仕事」についてのまとめ記事はこちら ↓↓↓

お花の季節の手仕事
お花を上手に生ける上で知っておくとよいことは、そのお花がどのように芽がでて、葉が開き、茎が伸びて、花が咲き、かれていくのかを知ることです。出生を知ることで、そのお花のいけ方や活かし方がわかります。お花が咲く本当の季節もお花別に紹介します。

季節の手仕事の関連記事

◆「季節の手仕事カレンダー」はこちら ↓↓↓

季節の手仕事カレンダー
季節の手仕事をまとめた月ごとに「季節の手仕事カレンダー」。これを見るだけで、季節の手仕事を忘れずにできます。季節を感じながら、楽しく季節の手仕事をしましょう。

◆「食材別の季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

食材別の季節の手仕事
季節の保存食を作るのに必要なメインの食材を、食材別で紹介しています。野菜、山菜、野草、果物など分野に分けております。それぞれの食材が育つ姿、本当の旬、収穫方法、アク抜きや下処理、保存食のレシピやメニューなど、季節の手仕事を紹介しています。

◆「和菓子の季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

和菓子の季節の手仕事
和菓子で季節を感じるために、行事食など特定の日に食べる和菓子、季節の和菓子の種類、1年中食べられる和菓子の種類、地域の和菓子の種類などを紹介。高級なイメージのある和菓子ですが、普段使いの和菓子もたくさんあり、和菓子がもっと身近になります。

◆「暦としつらえの季節の手仕事」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

暦としつらえの季節の手仕事
二十四節気、七十二候、五節句、節供、雑節などの暦に沿って季節を感じられるよう、カレンダー式に紹介。それぞれの暦の行事食、その時期に旬を迎える食べ物や和菓子、お花やしつらえなどの関連を含めた季節の手仕事を紹介。しつらえるものについても紹介。

◆「おすすめの食材店と旬の食材探しで訪れたい道の駅」のまとめ記事はこちら ↓↓↓

おすすめの食材店と道の駅
旬の食材を探しに行くのにマストな探し方は、農家さんが作っているものを持ち込む、道の駅、旅の駅、村の駅、川の駅、ファーマーズマーケットです。手に入らない食材の宝庫です。また、個人的によく利用している地元の食材のお店もご紹介しています。



20代30代で海外30か国、国内39都道府県を旅した経験から、「日本人の季節を取り入れた素朴な生き方・暮らし方」が好きになりました。日本の伝統文化のいけばなを30年以上嗜み、地元の食べ物、旬の食べ物、保存食、和菓子、しつらえ、手仕事など、季節や暦を大切に感じながら日々暮らしています。自分でも忘れてはいけないことやレシピなどをここに記録し、自分でも見て確認しながら日々アップデートしています。皆様の参考になれば幸いです。ちなみに、私は料理研究家でも料理人でもありません。お花の先生をしています。自然と共に、日々の変化を自分の手で愉しんでおります。

asunaniをフォローする
 5月に咲く花12月に咲く花
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました