節供の1つである「亥の子餅」。
あまり知られておらず、何?と思われる方も多いことでしょう。西日本で多く行われる行事です。
そこで、「亥の子餅」を食べる日にち、食べる時間、なぜ食べるのかなどをご紹介。
「亥の子餅」が近くの和菓子やさんで手に入らないようでしたら、自分で作ってしまう簡単レシピもご紹介。ぜひ、チャレンジしてみてください。
節供とは
節日と言われる上巳の節句や端午の節句などの際に、神様に供えられたお料理のことをいいます。正式には、供御(くご・天皇の飲食物)のことをいいます。「せく」「おせち」「せちごと」などともいいます。
この節供を「御節供(おせちく)料理」といっていたが、のちに節会のうちでも重要な正月の祝い膳のことを「おせち料理」というようになったといわれています。
「亥の子餅」は、この「節供」のひとつです。
「亥の子の祝い」とは
「亥の子の祝い」とは、猪が多産であることから、子孫繁栄の願いが込められた行事として、平安時代に宮中で行われていました。貴族たちが、新米で搗いた「亥の子餅」を食べたり、贈りあう行事でした。
この頃、「亥の子餅」を食べることが、万病を除くまじないともいわれました。
「亥の子の祝い」は、「玄猪(げんちょ)」、「厳重(げんちょう)」「厳祥(けんじょう)」ともいいます。
「亥の子の祝い」はいつ?
節供「亥の子の祝い」の行事とは、「亥の月」である旧暦の10月(現在の10月から11月)の最初の亥の日の亥の刻(21時から23時頃)に「亥の子餅」を食べるという行事のことです。
日にちは毎年変わります。
2025年は11月2日21時~23時頃です。
「亥の子餅」を食べる頃は、秋が深まり冬を感じ始める頃になります。
ちなみに、「亥の子」の季語は、「冬」になります。
節供「亥の子の祝い」に「亥の子餅」を食す背景
亥子祭 いのこさい、いのこまつり
猪にゆかりのある京都・護王神社では、亥の子の日に「亥子祭(いのこさい)」が開催されます。
この日、護王(ごおう)神社では、餅を搗いて「亥の子餅」を作り、京都御所にお供えし、「亥の子餅」を皆様にお配りし、無病息災や子孫繁栄を願うそうです。
「亥子祭(いのこまつり)」は、各地で催されており、それぞれの地域で行うことは違うようです。
火除け
猪(いのしし)は、火の神様のお遣いとも言われており、火除けの意味もあり、江戸時代にはこの日からこたつや火鉢に火を入れる習慣や茶道の炉開きなどが行われます。
現在では、この茶道の炉開きの際のお菓子としても「亥の子餅」は使われています。
「亥の子餅」の歴史
『源氏物語』と「亥の子餅」
古くは、『源氏物語』の第9帖「葵」の帖にも万病を祓うために食べる「亥の子餅」が登場します。
「その夜さり 亥の子餅ゐ 参らせたり」
光源氏と紫の上の婚姻に、「亥の子餅」が花を添えたということです。
形や味の記述はなく、平安時代から鎌倉時代の史料には、原材料は、大豆、小豆、大角豆(ささげ)、栗、柿、胡麻、糖(あめ)の七種類と粉を使って作ったものだったとされます。
参考文献:虎屋文庫「源氏物語と和菓子」展より
「亥の子餅」の歴史その後
それまで宮中での行事であった「亥の子の祝い」も江戸時代には、庶民の間でも行われるようになりました。
江戸時代の「亥の子餅」は、紅白黒の三色で碁石のような形をした餅の記録もあり、餅の形はさまざまだったといえます。
「亥の子餅」の材料

「亥の子餅」の材料にに正しい決まりはありません。
現在の「亥の子餅」は、もち米の生地には、刻んだ落花生、炒った黒胡麻、くるみ、干し柿、栗、種子、果実、花梨、黒砂糖、小豆の蜜漬け(甘納豆でもよし)、きな粉などを交ぜ入れるようです。(全部ではありません)
餡は、こしあんをベースにしたり、白餡をベースにしたり、干し柿を刻んだものを白餡に交ぜ柿餡にしたり、内側にこしあん、外側を白餡にしたり、いろいろです。
一番内側には栗を入れてあんで包むなど、独特な香りや食感の餅菓子となっています。
日本全国各地の「亥の子餅」
地域により、また作るお店さんにより、使う材料も味もそれぞれ違います。
「伊勢屋」の亥の子餅
福井県小浜市にある「伊勢屋」さんの亥の子餅は、求肥生地に小豆が練り込まれています。中央に栗餡、その外側にこし餡、そして求肥に包まれます。小豆色の生地で、可愛いピンク色をしています。天保元年(1830年)創業。
京都の亥の子餅
京都の日常使いのお菓子やさんである「おまんやさん」では、茹で小豆をついて入れてついた餅で、あんこを包んだものが「亥の子餅」として売られています。
「吉岡製菓」の亥の子餅「胡麻嵐」
島根県出雲市にある「吉岡製菓」さんの亥の子餅「胡麻嵐」は、餅粉を蒸しあげ、砂糖と白胡麻を混ぜて練り上げます。黒胡麻を餡に練り込み、餡を包みます。仕上げに生姜を入れるのがポイントです。昭和28年創業。
徳島の亥の子餅
徳島では、蒸したさつまいもと一緒に蒸した餅をつきながら混ぜて滑らかにしたものに、小豆のあんを包んだ「芋餅(いももち)」が「亥の子餅」として食べられます。
【季節の手仕事】簡単「亥の子餅」のレシピ
ここでは、上生菓子風にうり坊の形に作った「亥の子餅」のレシピを紹介します。
上生菓子風に作った「亥の子餅」
外側の餅はもち粉ではなく、手に入りやすい白玉粉で作ります。あれば、上新粉ともち粉で作ってみてください。
《 材料 》8個分
白玉粉 40g
水 80g
醤油 少々
黒砂糖 80g なければ白砂糖でもOK
生地に入れるつぶあん 40g
シナモンパウダー 1g
煎り黒胡麻 10g
落花生 少々
中に入れるあんこ 200g
手粉用片栗粉 適量
《 作り方 》
①中に入れるあんこは、8等分に分け、丸めておきます。
②鍋に白玉粉と黒砂糖を入れ、水で溶かします。
③弱火にかけ、しょうゆ、つぶあん、シナモンパウダー、黒胡麻、刻んだ落花生を入れ手早く混ぜ、滑らかになったら、火を止めます。
➃まな板に片栗粉を薄く広げ、③の生地をのせ8等分に分けます。
⑤手に片栗粉をつけ、➃を手のひらにのせ、①のあんこをのせて、丸めます。
⑥閉じ口を下にして、卵型に整えます。
注意)③から⑥は一瞬です。手早く作業しましょう。
⑦はけなどで、余分な片栗粉を払い、いのししの背になる部分に、金串があれば3本焼きを入れましょう。金串がなければ、バーベキューで使う串などで3本線を入れて完成です。いのししのきばを焼き入れてあげるのも良いでしょう。プロは「焼き鏝(やきごて)」を使います。
黒胡麻で目をつけてあげてもいいですね。
亥の子のおすすめの逸品
うり坊と言えば、地元伊豆天城の「小戸橋製菓」さんの「猪最中」が有名です。伊豆では、猪がよく現れることで有名です。私も何度も出逢いました。「亥の子餅」ではありませんが、こちらからお取り寄せができます。↓↓↓

明日はどんな手仕事する?
日にちが決まっておらず、毎年日にちが違う行事は、どうしても忘れがちです。運よく和菓子屋さんなどで見かけて知るなどということも多いのではないでしょうか。
私は、秋になると虫の知らせか、なんとなく「亥の子餅」が食べたくなり、「いつだろう?」なんて調べたりします。このブログを書くようになってからは、皆様に日にちをお伝えすることから、その年が終わると次の年を調べるようになり、忘れなくなりました。良いことです。
「亥の子餅」は、近辺の和菓子やさんでは、なかなかないことが多いので、自分なりの、手に入る材料で作ることが、楽になりました。本物でもないでしょうし、器用ではありませんが、それなりにできれば、満足です。
みなさんもいかがですか?
それでは、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
明日が素敵な1日になりますように。
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